2019/07/05 日本経済新聞 大機小機 『資産運用ビジネス成長の核心』より
ロンドンでの世界の資産運用会社のトップ(CEO)が集まるサミットに出席した感想などが記されている記事でした。
まず老後資金不足問題もあり、昨今注目を集めている「資産運用」ですが、意外にも日本からの参加者はなく、欧米主導(オセアニア、インドは含む)であるとの印象とのこと。金融資産の蓄積が進んだ日本において、資産運用ビジネスは今後の金融業界の中核を占めることは間違いなく、多くの国民の資産形成を着実に進めるためにも、その進化と高度化は不可避としています。
そして資産運用はグローバルビジネスでもあり、世界の資産運用動向を的確に把握することは極めて重要だとあります。(が、、、日本からの参加者がいないというのは、やはり日本がこの分野で周回遅れの理由も納得できます) この会議では、アンケート調査を踏まえ業界全体が各種コストの上昇と運用報酬の低下圧力に直面し、今後は低成長にならざるを得ないとの基本路線が示されたようです。こうした環境下で、資産運用会社は「あるべき姿」に立ち返る重要性が強調されたとあります。
この「あるべき姿」への回帰、第一は株主利益と顧客利益の相反を避ける。本来、資金を預かる顧客の利益最大化が資産運用業の基本ですが、株主の利益が優先される傾向があります。例として運用会社のM&A(合併・買収)の目的は何かを問いただすべきだと言っています。株主利益が強く意識され、顧客のリターン向上のためという基本的な視点が欠如され、本来の目的がないがしろにされているのではないかとの提言です。
第ニは異常に強い残高(AUM)志向だともあります。残高の大きさは運用会社のイメージ戦略上は重要かもしれませんが、顧客のリターン向上には直結するものではないとあります。確かに「わが国最大」等の表現で規模の大きさを強調するPRもありますが、このことがどのように顧客のリターン向上につなげるのかという視点での説明に説得力を欠くケースが多いと厳しい指摘。
今後、日本でも資産形成への関心が高まる中で、資産運用会社への期待は一段と高まってきます。どんなビジネスにも変えてはならない基本鉄則がありますが、顧客の資産を預かる資産運用ビジネスでは「顧客の利益第一」という理念こそが、ビジネスの継続的発展の核心だと銘記すべきと記事は終わっていました。
第一の警鐘、株主利益<顧客利益は資産運用業においては全くその通りだと思います。ただ、残高の拡大志向はある程度、理に適った企業活動かなとも思います。
実は、私が長年関わってきた、超富裕層向けビジネスであるプライベートバンキングでもこの残高拡大信仰がとても強く、その文化にどっぷり浸かってきたかく言う私も、お客さまからの預かり資産残高はとても気になります。PB時代からの「預かり残高こそ信頼関係の証し」という考えが抜けません。
資産運用を長く続けて頂くためには、リターンばかりを追求するより、リスクを管理することも大切であり、市場のリスクは避けられないにしても、大きな損失を回避するためには、ある程度の資産規模にて資産の分散を行い運用資産を管理していく必要があります。決して無理をせず、大きな損失を回避しながら、適正なコストに収めながらも、着実にリターンを長く重ねるためということであれば、規模拡大を目指す経営もアリではないでしょうか?
運用資産の規模拡大による経費削減や合理化の結果をお客様に還元している米国の資産運用会社のバンガード社はこの路線ではないかと思います。
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