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執筆者の写真RYUICHI MOTOHASHI

株式市場の中での「質への逃避」

2019/08/09 日本経済新聞  『低リスク株投信へマネー』より


値動きが小さい低ボラティリティ(低変動率)の株式を組み込んだETF(上場投資信託)に資金が流入しているようです。昨今の経済摩擦の激化の中、投資マネーは先進国債券や金などの安全資産に向かっていますが、株式市場内にとどまるマネーでさえ、比較的リスクが低い銘柄を選択する動きが顕著になっています。

米運用会社ブラックロックによると、世界の低ボラティリティ銘柄で運用する「最小分散型」ETF計15本への資金流出入では、年初来で126億ドル(約1.3兆円)の流入超となった模様。6月以降はほぼ毎営業日、資金流入超が継続しているとあります。


「低ボラティリティ銘柄」とは株価の変動が比較的小さい銘柄を指しており、相場全体の変動の影響を受けにくいとされ、通信、食品といった利益の安定性が比較的高い銘柄が多いのが特徴(景気が悪くなっても、急に携帯電話の利用を控えたり、大幅な食費を抑えるということが難しい)です。運用成績がブレにくいため、投資リスクが相対的に低いと認識されています。8月からは日米など世界主要国の株式市場は軒並み下落、先進国債券の利回りはより低下(債券価格は上昇)しています。これは資産間のマネーの流れを見ると、リスクの高い株式からリスクの低い債券への資金流入が加速しており、さらに株式市場の中に限っても、こうした「質への逃避」が起こっていると分析しています。


これまでの堅調な株式市場をけん引してきたのは、米国のGAFAなどのテクノロジー企業でしたが、こうした成長株は世界景気の減速懸念が高まってくると買い控えられ易くなってきます。資産間(債券⇔株式)で資金を動かしにくい(つまり株式で運用することを定めれられている)機関投資家の中には、成長株の一部を低ボラティリティに乗り換えてリスク管理を行なおうとする動きもあるようです。

米中貿易摩擦や各国金融政策の行方、突発的なドキッとする不透明感を連想させる出来事など、まだまだこの低ボラティリティ銘柄を選好するムードは継続する可能性はあるとして記事は終わっています。


これまでの金融緩和で潤沢なカネ余り状態の中、ある程度の利回りが期待できるものは全て探しつくされ、あとはどのタイプ(株式の変動なのか、債券のデフォルトなのか、、、)のリスクを取れるかを投資資金の「性格」と照らし合わせて、投資の意思決定を行うことがとても重要な局面です。

長引く低金利の中で株式への投資スタイルも変わっています。価格変動や値上がりを狙ったトレーディング(売ったり買ったり)よりも、高い配当を狙って買ったらバイアンドホールド(中長期保有)など。一度に買わず分けて買うなどなど、様々な投資手法も組み合わせながら、一度に過大なリスクを取ることは避けることが大切なのは間違いないと感じます。

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