2019/08/08 日本経済新聞
『日本の不動産に照準 低金利でなお妙味』より
数々の外資系ファンドによる日本の不動産市場への参入についてのトピックスです。
株式の運用が中心の英アバディーンは専門チームを組成、高齢者向け住宅などへの投資を計画、米国KKRは未公開株(PE)投資と組み合わせた不動産投資を狙っているとあります。
超低金利の日本において、利息負担を考慮したとしても不動産への投資利回りが依然高い状況が続くと考えており、世界的にみて日本の不動産はなお投資妙味があるとの判断です。
先般、日本の生命保険会社も国内不動産への投資計画を拡大しているとの話題もあり、こうした活況な状態が続く不動産市場への更なる新しいマネーの流入は、より一層の過熱感を心配する声も聞こえてきそうです。
最近の外資系ファンドの不動産投資の投資「対象」や「手法」も変化しているとも感じます。記事では高齢化で安定した利用が見込めるため、高齢者向け住宅の開発や既存物件の取得を進める(個人的には確かに利用者が増える世の中だから物件としての安定的な利回りは見込めるけど、入居者へのホスピタリティ、サービスや運営の安定感がとても大切な物件ではないのかな、、、とも思ったり)や、投資先企業の保有遊休動産を価値向上や再開発して売却したり、大手企業の不動産子会社への投資等と投資対象・手法もバラエティに富んでいる印象です。
これを可能にしているのは、世界の主要国の中でもマイナス金利政策を継続している日本の金融環境です。物件価格の高騰は投資金額が高額となりイコール投資利回り低下に直結するのですが、資金調達金利が低いため期待利回りとしては、まだまだ投資可能な範囲だという判断です。実際、東京の主要オフィスビルの投資利回りから長期金利を差し引いた利回り差(イールドスプレッド)は2.9%台で、2%台半ばのロンドンや1%台のニューヨークに比べるとまだまだ採算的に日本に優位性があります。
また日本企業による物件売却もあり、投資対象の供給面でも外資系ファンドの関心が高まっているようです。19年3月には武田薬品大阪本社ビル他21資産が米国グリーンオークへと
約500億円で売却、同7月には日本たばこ産業(JT)による港区本社ビルの売却意向を示し、1000億円を超えそうなこの売却案件に対しても、既に複数のファンドが関心を示しているとあります。
最近の東京都心主要オフィスの3.3㎡あたり単価は19年4月時点で1008万円と、08年のリーマンショック前(不動産ミニバブルと言われた時期)以来の水準にあるとされ、今回のような外資系ファンドの新参組と更なる緩和マネー流入は、物件高値掴みとなりかねないと警告している記事でした。
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