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執筆者の写真RYUICHI MOTOHASHI

安定配当資産だったのに… もがくREIT

2020/09/02、09/03日本経済新聞『もがくREIT上・下』より J-REITの定点観測シリーズになりますが、「もがくREIT上・下」

9/2は安定配当妙味揺らぐ、9/3物流系に資金、進む二極化との見出し。 コロナ禍でホテル、商業施設およびオフィス市況の先行きが見通しにくくなり、安定配当成長が揺らいでいます。これは即ち投資家のREITへの見方が変わっていることを示しています。ある地銀の担当者の「REITは割安だと思っていても投資を機関決定する稟議を上げにくい・・・」という声が紹介され、3月急落での損切りや会計上、減損処理をやむなくなった嫌な経験があるからでしょう。

東証REIT指数は3/19に前日比で19%下落、過去最大の下落率で1カ月のうちに半値になってしまいました。その後は流石に回復したにせよ現在も1,710前後と2月の高値からは2割低い水準でステイしてしまっています。これはコロナ急落前の水準に回復した日経平均に比べ、大きく出遅れています。

外出自粛のあおりを食う商業施設・ホテル、出勤者と在宅勤務の併用する働き方を採用する企業のオフィスなど、不動産を対象とするREITには厳しい状況です。REITの魅力は安定的な分配金で、利回りの平均も3~4%程度と日本株よりも相対的に高いことが資金を引き付けて来ました。しかし最近は減配が急増。やはりその多くはホテル系が顕著となっています。


減配の背景は勿論分配金原資である賃料減免や延滞要請が強いことだとあり、ホテルの稼働率低下や商業施設内のテナント休業からは当然と言えます。 不動産業界全体で賃料収入が大きく減少したことで、REITの安定配当成長という前提条件は崩壊してしまいました。この結果、株式のPBRに該当する「NAV倍率」も国内全体で0.95倍と、6割超で1.0倍を下回っていることから、割安とも言われます。


しかし内部留保できないREITの宿命である「増資」による成長は低い株価でしかできなくなり、新規物件獲得への増資という手段は難しくなっています。ここまで比較的順調に拡大してきたREIT市場は少々足踏み・・・かも。 9/3全体としては苦境ながらも、一部選別の目が向かうのは「物流施設」系REITだともあります。コロナで休業を余儀なくされたホテル、商業施設、在宅勤務の普及でがら―んとしたオフィスの将来賃料の下落懸念の一方、注目銘柄は専ら「物流系」


巣ごもり消費やオンラインショッピングの活用で、倉庫需要が上昇しており、アマゾンも日本で大型倉庫へ投資、倉庫内の施設効率化のため物流ロボットやラインへの投資と建物・施設への投資も最近の経済情報誌では目にします そして投資対象としての需給面でも抑えておくべき2面性があります。 9月に世界的な株式指数FTSEグローバル株式指数へのREITの組み入れはより多くの投資家の資金が入ってくる可能性も秘めていますが、日銀によるREIT買い入れ「天井」が近いと言われ、21年度中には全銘柄が上限10%に達してしまうかもとも言われます。

REITは不動産として賃料を生む現物としての価値と様々な投資家に取引されている金融商品としての側面を考えておかないとならないアセットクラスであることは、何度となく言及してきましたが、まさに二極化が進むコロナ後は、いろいろな側面から投資対象として分析すべき資産であると感じます。


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