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執筆者の写真RYUICHI MOTOHASHI

市場の主役ETFの拡大に潜む懸念...

2019/12/23日本経済新聞『ETF、市場の主役に』より


昨今の金融市場で急激に存在感を高めているのが、ETF(上場投資信託)であり、

その運用資産は世界で6兆ドル(約650兆円強)と5年で2倍強に増加したとあります。


この背景には世界中のあらゆる資産を容易に売買できる利便性が新たな投資資金を引き付けてきている反面、この利便性故に素早いマネーの流出入によって、金融市場の「次の市場波乱」の火種にならないかと金融当局は警戒しており、市場が大きくなったが故の新たな懸念も出てきているとのこと。


ETF金融商品における「20世紀最大の発明」とも言われ、投資のあり方を大きく変えたとされています。


証券取引所に上場され、取引時間中は何時でも自由に(指値、期間指定でも)売買可能、一日1つの値段しか買付・解約ができない通常の投信とは自由度が高いのが特徴です。


価格はS&P500、日経平均などの指数に連動するため比較的投資初心者にも分かり易い、個別株などよりも銘柄が分散されているためリスク分散が効いていて、新興国・ハイイールド債券・原油・穀物等のなかなか投資が難しい資産にも少額で投資が可能となりました。


指数連動のため従来の投信よりも手数料が低いものが多い(最近は低コストの従来型の投信も多いので、一概にそうとは言えません)。


米リッパーの調査では、11月末時点のETF残高は6兆ドル、14年末の2.8兆ドルからは約倍増。これは資産価格の値上がりによる資産増よりも、新規マネーの流入によって増加しているとのこと。


このETFの主要プレーヤーも海外と日本では全く異なっています。


海外ではHFがメイン、最近は年金・保険などの機関投資家が急激に取引を増やしているのに対し、日本のETFは日銀の購入(売買ではありません)が大半。


米FRBによれば、ETFは今年9月までの約5年で米国株を4140億ドル買い越し、企業の購入額2690億ドル(自社株買いから増資分を引いたネット額)をも上回る最大の買い手になっているとのこと。最近は特に債券市場でもETFの存在感が高まっており、今年は11月までで債券型への資金流入が2340億ドルと株式型2030億ドルを上回っているようです。


こうした債券型ETFの普及企業が発行する低格付け含む社債やローン債権の組み入れを通じて、企業の資金調達を助けるようになっています。


さらに高い成長期待を元にこれまで世界中の資金が流れ込んでいた新興国では、売買が容易なETFの取引を通じて資金流出が懸念されるようになって来ました。今やETF等の指数連動型は新興国株式投資のシェアで1割を超え影響度は無視できない存在です。


そして米FRBの懸念する「ETF拡大=米国企業債務に関するリスク拡大」は最大の爆弾かもしれません。


債券型ETFの売買が活発になっても、中に組み入れられた低格付・高利回り債の実際の売買が活発にされるということはなく、むしろ経済ショック時には思ったように売買できない流動性リスクに直面します。


記事の最後には、仮にETFの解約が殺到し、債券が売られ価格が下落、低金利で借金や社債といった債務を増やし続けた企業の資金繰りが悪化して、、、なんてことになったら、規模拡大で取引が便利になったなどと言えない事態になりそうです。


そう言えば、、去年のクリスマスもHY債急落に端を発した市場混乱が記憶をよぎります。

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