2019/09/21日本経済新聞M&I 『毎月分配投信 実力で選ぶ』より
私の本業である投信信託についての最近の記事について紹介したいと思います。
逆風が吹いていた「毎月分配型」の投信に、最近人気が回復してきているとあり、5月には2年ぶりに資金流入になった模様です。元本を取り崩して分配するファンドを金融庁が問題視し、販売会社である証券会社や銀行も積極的な販売を自粛傾向でした。しかし、運用しながら定期的に取り崩す金融商品はリタイア世代の投資家に向いているとの考えもあり、複雑な分配金の仕組をキチンと理解してファンドの実力を見極められる投資家には選択肢の一つとなりえるのはないかというものです。
投資でお金を殖やすポイントは利息がさらに利息を生む「複利効果」が欠かせない発想です。しかし運用の利益を上回る分配金を支払うケースが多い毎月分配型は、分配で元本を取り崩すため、この複利効果は働かなくなります。この仕組みのため、金融庁は「顧客の長期資産形成には適さない」と指摘し、販売会社も営業戦略を見直し積極的な提案が下火になっていました。しかし毎月分配型には投資家からの一定のニーズが根強く存在し、国内の公募投信(除くETF)の内、毎月分配型は5月から4ヵ月連続で資金流入が流出を上回り、純資産残高を増やしたようです。8月末の残高上位10本中、8本が毎月分配型となっています。
純資産残高1位はピクテのグローバル・インカム株式F(通称:グロイン)。このファンドは世界の高配当利回りの公益株に投資するもので、電気・水道・ガス等の景気動向左右されにくい業種の「ディフェンシブ銘柄」が多くなっており、「不安定な経済状況の中、長期的なリターンが期待できる」といった投資家の声も紹介されていました。毎月分配金での注意点は、毎月の分配金が安定していても、必ずしも運用実績でそれに見合う利益が出ていないことも多くあることです。追加型の投資信託では、運用で積み上げた利益だけではなく、それぞれ購入タイミングが異なる投資家間の公平性を維持する目的である「収益調整金」も分配金に回せる仕組みです。
人気ファンドほど新しい投資家がたくさん入ってくるため、その元本の一部が、この「収益調整金」としてプールされて、高い分配金の原資に使われるようになります。しかしこの収益調整金は利益ではないため、これを原資に分配を行うことは、その分元本の取り崩しとなり、ファンドの基準価額は下がることになります。投資家としては、分配金の大きさだけではなく、基準価額の動きを確認ながら、ファンドの実力を見極めなければなりません。特に昨今のような世界的な低金利状態が続く中での、実力以上の分配金支払い維持は難しくなっています。8月は毎月分配型の36本が分配金を引き下げ(1月には55本が引き下げています)、一方分配金を引き上げたファンドは9本どまり。
こうした分配金が引き下げされる中でも、、まとまった定期収入がない高齢者にとっては、貴重な金融資産の運用先として定期的な収入のような仕組みは根強い人気となっています。ただ記事でも、かつての高金利の銀行預金のように、安易に考えている投資家がいることは問題視すべきだとあり、どんなものに投資していて、分配金の原資は何で、どういう仕組で分配されており、どういうリスクがあるのかといった、理解すべき基本的な部分は抑えた上で投資を行うべきだと注意を呼び掛けていました。
さらに一歩進めて考えると、投資家の方がキチンと理解できるように説明したり、適正な投資を続けられるようにフォローするといった、ご案内・提案をアドバイスする側のサポートも大切なことは言うまでもありません。
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