2019/08/16 日本経済新聞『米景気後退 意識する市場』より
昨日に続き、米国債券市場での12年ぶり逆イールド(長短金利の逆転)現象を、様々な観点から比較しています。歴史的に逆イールドの発生は、高い確率で景気後退に入るとされていますが、そのタイミングは逆イールド発生時より1.5年~2年以内後と良く言われます。米国では07年のリーマンショック前、00年のITバブル前にもこの逆イールドが起こっていますが、今回のこの現象が過去2回と大きく異なる点は、金利の水準が1%台後半と非常に低い水準である点でしょう。
ITバブルに沸いた00年や欧州金融バブルの05年~07年は金利が4%~6%台でした。この10年、20年で欧米を中心とする先進国の経済成長率は下がると共に、金融緩和環境が続いているため、金利水準は継続的に低下したままの状態の中、金利が1%台の水準で今回の逆イールドが発生しています。
課題は景気後退局面入りした時の対応力に限界がある点です。金融・財政政策の余地があまり残されていません。01年や08年~09年の景気後退局面では、FRBは5%前後の利下げで対応できましたが、今回米国は本当に景気後退局面入りした時には、政策金利下げの「のりしろ」は殆どありません。また以前は米国・中国および日本は大規模な財政出動も繰り出して金融危機を抑えましたが、既に各国の債務は非常に膨張しており、10年前のような大盤振る舞いの対応は難しい状態です。さらに国際協調で乗り切るという対応もワークするのかは微妙です。08年10月のワシントンでのG20では、各国トップが強く問題意識を共有し、財政政策等素早い対応で乗り切りましたが、トランプの保護主義へのこだわり主張は最近のG20での話し合いを実のなる内容できません。
こうした世界的な先行き懸念は米国以外の世界(先進国)各国でも逆イールドが生じていることにも表れています。英国・カナダ・香港・ノルウェーでも10年国債利回りが2年債を下回っており、英国はEU強行離脱、香港はHKドルがUSDドルへの連動している点、ノルウェーでも国として依存度が高い原油価格が世界的景気後退で不安定と、投資家のリスク回避姿勢が高まっているのを表しているためでしょう。
日本はかろうじて10年債-2年債では逆転していませんが、既にマイナス金利に陥っていますし、そもそも日本は日銀の国債大量購入や外国人投資家の利回り追求行動にて需要と供給が著しく歪んでしまっています。
短期の金利は中央銀行の金融政策の影響度が大きく、長期の金利は成長率や物価上昇といった「経済の体温計」というのが基本ですので、長期金利が下がって短期金利と逆転するという金利カーブの異常な形→景気後退への注意サインとして、より注意して米国経済のみならず世界全体の経済動向を見る必要があります。
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